特集:股の痛み

股に痛みを感じる原因の1つとしては「股関節の異常」が考えられます。ただし、股関節の異常は「痛い」「足を組みにくい」のような自覚症状以外にも、周囲から「歩き方が普通ではない」と指摘されることで気づく場合もあるようです。

股が痛くなる原因として考えられる代表的な病気に「変形性股関節症」があります。国内の患者数は「推計2500万人」とも言われていますので、少なくとも日本国民の1/5が股の痛みに悩まされているとも考えられるでしょう。すでに、歩行困難や足の変形(O脚)が見られる場合は、末期的な症状であり、慢性的な痛みに悩まされている可能性も高いです。

股が痛くなる原因

変形性股関節症

変形性股関節症とは、関節の軟骨に炎症・変性・破壊などが起きる病気です。急性ではなく、通常は時間をかけて発症・進行します。年齢を重ねるごとにリスクが増加し、60歳を超えてくると、8割以上の方の股関節、もしくは膝や肘、脊椎などに関節症症状が見られるとも言われています。(*ごく軽症のケースも含みます)

さて、変形性股関節症の進行は4つに大別できます。

  1. 軟骨そのものは正常。多少の股関節変形が見られ「前股関節症」とも呼ばれる。
  2. 関節の隙間が減り、軟骨のすり減りが始まる「初期状態」。
  3. 軟骨のすり減りが進み、表面にざらつきが。骨のこすれから痛みも出る「進行期」。
  4. 軟骨のすり減りがかなり進み、ほぼ無い状態に。表面もざらつきからでこぼこになる「末期」。

変形性股関節症の末期ともなれば、強い痛みが慢性的となり、普段の生活も大変となります。変形性股関節症は、それが生じると考えられる原因によって2つに分類されます。

これまでご説明してきた変形性股関節症は「一次性変形性股関節症」です。主要原因は加齢や肥満と考えられますが、不明な部分もあります。一方、先天的な股関節脱臼や、股関節の発育不全などが原因なる変形性股関節症は「二次性変形性股関節症」と呼ばれます。

詳しくは、「変形性関節症」のページをご参照ください。

関節リウマチ

免疫機能の異常により、自らの関節へダメージを与える「関節リウマチ」。なぜこのような免疫機能の異常が起きるのかについては不明で、今後の研究が待たれます。手足の指関節からはじまり、全身へと症状が進行しますが、股関節に症状が出ると、可動域が狭くなることが知られています。さらに進行すると、変形性股関節症と同様に、軟骨のすり減りや、骨の変形が生じ、強く慢性的な痛みが生ずるでしょう。

詳しくは、「関節リウマチ」のページをご参照ください。

大腿骨骨頭壊死症

病名が示すように、大腿骨(だいたいこつ)の骨頭(こっとう)に壊死が起こる病気です。大腿骨とは、人体の骨の中でも最も巨大な「太ももの骨」で、骨頭とは、大腿骨の中でも股関節と接する部分を指します。大腿動脈の血流に障害が起こることで壊死が起こりますが、そもそもなぜ「大腿動脈の血流に障害が起こるのか」には不明点が多いです。

ただし一説では、アルコールをよく飲む方や、ステロイド剤を大量使用している方に発症が多いとも言われているので注意が必要でしょう。

大腿骨頚部転子部骨折

病名が示す通り大腿骨(だいたいこつ)の頸部が骨折する症状ですが、簡単に言えば「股のつけ根の骨折」ということです。通常ではなかなか骨折しにくい部位ですが、女性ホルモンの低下した閉経後の女性や高齢者ではリスクが高いと考えられます。中でも骨密度の低い方(骨粗しょう症の方)は危険で、ちょっとした転倒・つまづきが大腿骨頚部転子部骨折を引き起こすケースも珍しくありません。腫れや痛みで歩行困難となる場合もあり、日常生活に支障が生じる可能性もあります。

股の関節痛による症状

股の関節痛ではもちろん、股の付け根に違和感や痛みを生じます。しかし、意外にも気づかないケースが多く、病院で診察してもらう時にはかなり進行している場合も考えられます。その理由として、股関節がもともと、筋肉や人体に囲まれた深い場所にあるということです。加えて症状が、股関節そのものではなくその周辺(太もも、ひざ、おしりの痛み・違和感)に出るケースが少なくない点も挙げられます。ただし、これ以外にも「靴下がはきにくくなる」「あぐらの姿勢がしずらくなる」「歩きにくい」というサインがあるので、思い当たる方は病院へ行って診察・検査を受けると良いでしょう。さらに「歩くときに左右に揺れる」というのも股の関節痛を疑わせる大きなサインです。その理由としては、関節の可動域が制限されているのみならず「足の長さが左右で異なる」という変形性関節症の代表的な状態になっていると考えられるからです。周囲の人から指摘された場合はやはり病院でも診察・検査をおすすめします。

股の関節痛の予防・治療・治す方法

痛みを和らげる薬

股の関節痛については、残念ながら根本療法となる薬はありません。痛みを緩和する目的で消炎鎮痛薬を使用します。薬は患者さんのQOL(人生・生活の質)を向上させる意味でも不可欠ですが、痛みの抑えすぎによってサインを見逃す危険性についてはきちんと考慮する必要があります。

基本的には内服薬、座薬や外用薬(湿布、塗り薬など)はケースバイケースで処方します。注射による投薬は、痛みが強すぎる場合などに検討されます。

詳しくは、「関節痛の薬」のページをご参照ください。

物理療法(温熱療法・寒冷療法)

股関節の可動域回復、あるいは動きやすくすることを狙って、赤外線照射などをおこないます。患部を温めることで血行促進が期待できます。

装具療法

日常生活における「股関節の負担」を軽減するために、杖の使用がすすめられるケースも多いようです。歩行時における股関節への負担軽減には良い方法の1つと言えるでしょう。

運動・スポーツ

股の関節痛の症状や進行具合にもよりますが、運動・スポーツも治療・リハビリテーションの方法の1つです。股関節周辺の筋力強化、あるいは柔軟性の回復などを狙います。ウォーキングほか、水中歩行、ストレッチなどが医師や理学療法士によって提案されます。もちろん自己判断でおこなうことはせず、専門家のアドバイスやメニューに沿っておこないましょう。症状が軽い場合は、あるいは症状改善に体重コントロールの必要性が認められる場合は、有効な治療・リハビリテーションの1つとなるでしょう。

手術療法

症状が軽い場合や、初期段階では保存療法(薬物療法、運動療法、体重管理など)が実施されますが、それでも症状の改善が見込めない場合には、手術が検討されます。以下、代表的な手術療法の術式をご紹介します。

人工関節置換術
人工関節を股関節と入れ替えます。
骨切り術
関節の骨を切除・矯正します。

手術療法の後も、リハビリテーションによる運動やストレッチ、マッサージ、さらに必要に応じて体重管理などが検討されます。

まとめ

股関節の痛みは、活動を大きく制限するなどして、普段の生活に大きな不便をもたらします。 具体的には、長時間の歩行や階段・坂の昇り降りが難しくなるなどして、買い物はおろか、散歩や旅行も困難となるケースがあります。まず、股関節に違和感を覚える場合は、すみやかに病院へ行くことが重要です。また、股関節の痛みが生じる前に、普段の生活で予防することも心がけましょう。高齢者の方は、和式の生活をされている方もいらっしゃるかと思いますが、膝への負担を考えると「洋式の生活スタイル」に切り替えた方が良いでしょう。 例えば、トイレを洋式に切り替えたり、普段は正座ではなく椅子に座るなどといったことも有効です。同時に、股関節へ負担をかけないためにも「股関節周辺の筋肉を鍛えること」も重要です。股関節への負担に気をつけて、同時に筋力を向上させることを目指してください。

関節痛の症状

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